2018年4月6日金曜日

紀伊民報 「鄕組一札」を出版 紀州藩固有 あおい書店 2018.3.31

紀伊民報の記事
「鄕組一札」を出版 紀州藩固有 農山漁村支配の法規 田辺・あおい書店

 元禄12(1699)年に出され、幕末まで160年余りにわたって続いた農山漁村支配のための紀州藩固有の法規「鄕組一札ごうぐみいっさつ」の原文コピーと、これを翻字・解説した「紀州藩鄕組一札 雛形と解説」(A5版68頁)がこのほど、田辺市湊の「あおい書店」から出版された。市文化財秦羲委員の田所顕平氏は序文で「鄕組一札は大庄屋にとって権威の象徴であった」と述べている。

 同書店の多屋朋三氏が昨年十一月、ネットオークションに出ているのを見つけ、落札した。「本の冒頭に「父母耳孝行尓法度・・・」という紀州藩主徳川頼宣の教えを記した「父母状」の言葉があり、紀州藩のものと直感した」という。

 出版された「紀州藩郷組一札 雛形と解説」は熊野歴史懇話会(橋本観吉代表)が企画し、田所氏、福山大学名誉教授の久保卓哉氏、田辺市教育委員会の堀純一郎氏の協力を得て作成した。翻字と解説は久保氏が担当した。

 それによると「郷組一札」の「郷」は、数カ村かそれ以上の数の村を含んだ広域。「組」は地縁的に結びついて相互扶助をする近隣の単位。「一札」は一通の文書のことで、江戸時代、藩からの通達を大庄屋が各村の庄屋を通じて郷組の農民らの隅々に至るまで教え知らしめた一通の書状ということになるという。

 年貢は五人組や郷組ぐるみで完納すること▽農業に精を出すこと▽キリシタン禁制のこと▽徒党を組むことは禁制であること▽浪人・犯罪者の抱え置きは禁止であること、などのほか、他国や他領への出稼ぎや出入り、家屋・田畑の買売についてなど農山漁村支配のための諸事項が細かく記されている。

 田所氏は「郷組一札が出された頃、紀州藩は大規模な用水工事に着手し、検地も実施。生産を上げ、貢租の増収を確保するためで、郷組一札冒頭の年貢完納と耕作推奨もこのことと大きく絡んでいる」などと指摘。「藩は、大庄屋の権限を拡大・強化し、大庄屋を郡奉行や代官に代わって第一線に立たせることで農村支配の強化を図ろうとした」と説明している。

 解説では、「紀州田辺万代記」から田辺領郷組などを紹介。大庄屋の仕事ぶりや「父母状」の由来などについても詳述している。

 定価600円(税込み)。70部作り、20部は協力者と図書館に配布した。残り50部を同書店で販売している。 (沖本記者)

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