2017年4月21日金曜日

内山完造 白浜 京大臨海研究所 内海所長 紀伊民報 昭和32年5月21日

紀伊民報 昭和32年5月21日 2面

【中国と資料交換へ 白浜の臨海研究所と 内山完造翁が乗出す】
中国問題の権威、日中友好協会理事長、内山完造翁は先般田辺で講演を行い、聴衆に多大の感銘を与えたが、和大須川寛文教授、同協会村上県連理事長、橋爪局長らと共に白浜にある京大臨海研究所を訪れ内海所長の説明をうけたが、近海漁業の参考に中国近海の状況を知りたいと思い中国に照会したが、未だ資料が入手出来ない―との話をきき、内山氏に中国の郭沫若科学院長や政府要人とも知己があるので早速中国に連絡、資料を交換する事を確約した。
 これで中国近海の状況が分かれば漁業協定を結び参考ともなる訳であり、
 プランクトン研究では世界に知られている同研究所のこの交換での成果は
 大きく同県連が積極的にあっせんを行う事となった

内山完造 講演 田辺商工会議所 紀伊民報 昭和32年5月15日

紀伊民報 昭和32年5月15日 2面

【内山完造氏講演 日中友好協会理事長】
【動物の世界には革命は存在しない 物と心の二面を忘れるな】
日中友好協会田辺支部準備会では十三日夜田辺商工会議所会議室で日中友好協会理事長であり中国研究家として有名な内山完造氏を招いて講演会を開いた。以下は内山氏の講演の一部である(文責F記者)

中共には法律が五つしかない。憲法、労働法、工場法、婚姻法、徴兵法の五つであるが結婚は自由、恋愛-自由結婚と一夫一婦制度を基調としたもので中国五千年の歴史の中で中共によって始めて一夫一婦制度が確立されたのである
△毛沢東主席は「唯物論を研究する者は唯心論を読め、唯心論を研究する者は唯物論を読め」と言ったが物と心の二面である。日本人は半分しか考えぬクセがある。
△日本人が人の価値を判断する場合は家柄や財産などで決めるが、中国人は「王、候、相、将いずくんぞあらんや」で正か邪か、善か悪か、直か曲かの三つのハカリで人を判断する。蒋介石の国民政府は米式装備の三十九個師団を持っていたが十カ月の間にこれらは戦わずして中共側に寝返った。共産軍は正しい道理で国府軍を説き伏せて、その結果、寝返ったのである。強者は力で守ることができるが、弱者を守るのは正しさのみである。
日本は負けて弱者になっている、米国から使い古しの大砲や軍艦をもつて来ても駄目である。
△経済の根底は「最小の努力で最大の利益」と言うのは英国人の発明した言葉だと思うが、この最小の努力の蔭には謀略、策略、計略、商略が秘んでいる。かつては中国もこれをやったが、この結果は、五億の農民のうち五%の地主が五十%から六十%の土地を持ち、九十五%の農民で残りの土地を持つようになり、都会でも貧富の差が激しくなってしまった。そこで革命が起こって来たのである。革命は人間の世間のみにあって動物の世界には無い。革命は進化の鍵である。乱闘国会は悪いが、多数横暴で社会党に乱闘をやらした原因も考えねばならぬ。人間はサルから進化したと言うが俺は明日から立って二本の足で歩くと一匹のサルが宣言した時に大多数のサルは「我々は金甌無欠ゆるぎなく皇統連綿として四つ足で這って来ている」と聞かなかった。立って二本の足で歩き始めたサルは人間に進化したが、這い続けたサルは今でもサルである。良い事に変わって行くのが革命である支那には易姓革命と言う言葉がある。

【中共は三民主義 共産国家ではない ボロもうけの無い国】
△ローマの亡ぶは一日にして成らずと言うが中国の革命も一日で成ったのでない。孫文が革命を始めてから完成まで三十年かかった。孫文がハワイから帰って来た当時(清朝の末期)は全てが賄賂の時代であった。孫文は三民主義をかかげて革命運動に入ったのであるが三民主義とは次のようなものである。
 一、民生=みんな働いてみんなが食える
 一、民権=一人ひとりが権利を持ち義務を持つ
 一、民族=侵略せず、侵略されぬ
今の中共は三民主義の段階であり共産主義まで行っていない。中共は「最小の努力は最小の利益、最大の努力は最大の利益」でやっていると言ったら「ボロ儲けがないのやな」と言われたが、その通りである。骨董品屋でも「これは本物でいくらこれは偽物でいくら」と正札をつけて売っている。

【毛主席の月給わずか六五〇円 最低賃金は月五十円】
中共も一時は一錢のマンジュウが五万円、靴一足が四百五十万円と言うインフレになったが、コウフン制による生活物資(米、油、塩、木綿、燃料)の確保、貯金の物価とのスライド(貯金よりも物価が上がればそれに正比例して多く払い戻す物価が下がっても貯金した時の額を払い戻して行く)制度でインフレを克服し、新札に切替えてしまった。現在中共には一錢から五円までの札しか無いが毛沢東主席の月給は六百五十円、労働者の最低賃金は月五十円であり、月二十円あれば一人が生活できる所まで来た。日本はこれから、一万円札を出すと言うが、インフレは既に中国で試験済みである。

【中共貿易 米が狙う】
△中共では政治とは国民の希望する所に応えることだと言われているが、中共の六億の民衆は平和を希望している。日本は今、戦争と平和の岐路に立っているが,我々の道はハッキリしている。日本は今、米ソの戦略的要所にあるので国際価値が高いが、これを活かした外交をして米一辺倒から脱し、中共とも手をつながねばならぬ。米国は日本の眼を東南アジアに向けさし、その間に香港を通して中共との貿易を拡大し、確保しようとしている。六億の中共は大きな市場であることは、米国が一番よく知っている。



コラム 『蛙の声』

内山完造氏の講演を聞いたが近来にない名講演であった。革命は人間社会にのみあって動物の社会にはないとの説にも同感である。但し筆者は赤色暴力革命は大嫌いで合法的な青色革命か桃色革命が大好きだが内山氏も筆者の意見には同感であろうと信ずるものである。
△最小の努力で最大の利益をとの語句についての内山氏の話は、その話としてはその通りであるが、産業革命の立場から見るとオートメイションも最小の努力で最大の利益をあげようとするもので、それはあながち排除すべきものではなく問題は利益の配分(資本家と労働者と消費者への)公正化の如何にあろう。「乏しきを憂えず等しからざるを憂う」は政治の要所であるが、「豊かな富を等しく分ける」ことはそれ以上に必要であるから正しい意味での最小の努力で最大の利益と言うことを忘れては産業の進歩は後れるであろう。△とは言っても人口過剰の日本では思い切ったオートメイション化はできぬから問題はややこしくなるが生産性向上運動を利益の三者への公正な配分を条件として受け入れるだけの雅量がなければ中共を巡る貿易戦で米国や西独に押されるかも知れぬ。

内山完造 講演会予告 田辺 紀伊民報 昭和32年5月14日

紀伊民報 昭和32年5月14日 2面

【新しい中国 内山氏講演会】
日中友好協会準備会では十三日夜七時より田辺商工会議所に中国研究家として有名な内山完造氏を招いて、新しい中国について話を聞く

内山完造 田辺に来る 紀伊民報 昭和32年5月11日

紀伊民報 昭和32年5月11日 2面

【日中友好協会 内山理事長 來田】
日中友好協会、東京本部理事長内山完造氏が十三日来田、同協会紀南支部を結成することになったが、この準備委員会が十日夜七時から田辺商工会議所で開かれる