だが三峡に史上最悪の発明品であるブルドーザーが入ることになった。近代機器は山をわずか三か月で平らにしてしまう。今や地上で最も不要なものは、核兵器ではなくて、ブルドーザーである。
核兵器には世界中が目を光らせ、使用を抑止する。だが、ブルドーザーの使用を抑止するものは何もない。地上の至る所に運ばれて、木をなぎ倒し、山を削り、川を掘り返している。
人間が生活に便利なようにと自然破壊を繰り返す時代は、もうとっくに終わったはずなのだ。九十歳になって山を移そうとした北山の愚公のことを、今こそ思い出すべきなのだ。愚公の意味たるや深くて重い。
(『中国の環境保護とその歴史』研文出版 あとがき)
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